またまた読書感想。
秋なので。
開高健「日本三文オペラ」
梁石日「夜を賭けて」
どちらもテーマは「アパッチ族」。
「アパッチ族」とは、
今の大阪城公園は戦前には東洋一の兵器工場があり、
終戦日の前日にアメリカ軍の爆撃で破壊されて廃墟になり、
そのまま終戦後10数年放置されており、
その廃墟から鉄などを掘り起こして、生活の糧にしていた
人々のことを指します。
放置されていたとはいえ、一応は日本国の国有財産なので、
アパッチ族は警察に追われる存在であり、
その攻防を両作品とも描いています。
アパッチ族は在日朝鮮人が多く、
梁石日はまさにアパッチ族の一人だったそうで、
鉄の重さが肩に食い込む場面や暗闇などの描写は実感をともなった真に迫るものでした。
そして「日本三文オペラ」はアパッチ族の解散という場面で
幕を閉じるのですが、「夜を賭けて」は解散後にも触れられています。
大村収容所の存在についてすら知らなかった私は、
「こんなこと本当に日本で、しかも昭和30年代にあったの??」
と驚きの連続でした。
どちらの本も非常に面白かったです。
ちなみに「日本三文オペラ」は20年ぶりの再読です。
文章は梁石日の方が会話文が多くてすらすらと読めます。
当事者にしか書けない怒りや憤りが感じられます。
「日本三文オペラ」は梁石日のアパッチ族の友人であり、
開高健の妻である牧羊子の詩人仲間でもあった金時鐘から開高が
アパッチ族のことを直接取材して書かれたので、
当事者目線ではない文章ですが、開高ならではの表現、語彙が豊饒で、
うっとりとさせられる一文に出会えます。
「ふとんからはみだした足のさきにひとかけらの秋がひっかかっていた」
まさに今はそんな季節ですね。
そんな気分で目覚めることが多い今日この頃です。