本田靖春著「誘拐」ちくま文庫。
50年ほど前に起こった「吉展ちゃん誘拐事件」を題材にしたノンフィクション。
私が生まれる前の事件ですが、当時日本中が大騒ぎになり、
今でも記憶にある方もいらっしゃるようです。
この事件を機に電話の逆探知捜査ができるようになったそうです。
筆者は元新聞記者ということもあり、無駄のないわかりやすい文章で
非常に読みやすかったです。
「どうなるんだろう?」とページをめくる手がとめられなくなるほどの
緊迫感で、そのへんのミステリーや推理小説なんかよりよっぽどドキドキさせられました。
被害者家族にも死刑になった加害者にも公平に温かいまなざしが注がれており、
かつ日本人の性(サガ)や、日本社会にも非常に深い洞察でせまっており、
ただの事実を羅列しただけのノンフィクションとは一線を画す作品でした。
東京オリンピックを控え、高度経済成長に湧いているウラでは
社会の底辺の底辺でもがき苦しんでいる人がたくさんいるという
50年前の日本と現在の状況、状態ってほとんど変わっていないなと思わされました。
ぜひご一読ください。