悠々として急げ

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カテゴリ:本( 20 )

秋の読書週間

今年の秋は雨続き。
特に週末はよく雨が降る。
そんな時こそ家で刺繍か読書。

遅ればせながら、ジョージ・オーウェルの本を読みました。
「動物農場」と「1984年」


「動物農場」は色んな人が翻訳していますが、
私はもちろん開高健訳を選びました。
読んでいて北朝鮮の金正雲を彷彿させられましたが、
もちろんこれが書かれたのはもう随分と昔で、
ロシア革命が題材のようです。
革命→独裁というのはどこの国でもいつの時代でも同じなんだなと思わせてくれます。
主人公の独裁者が豚というのがやはり金正雲のイメージ通りでくすりと笑えます。

一方「1984年」
「動物農場」と同じ題材なんだけれども、暗い。まったく笑えません。
読後感はイヤな気分しか残りませんが、トマス・ピンチョンの解説で少しだけ救いがあったように思います。


「動物農場」の解説は開高健が書いているのですが、「1984年」にも触れられていて、開高がこの解説を書いたのがちょうど1984年頃で、「1948年にオーウェルが1984年を予想したこんな情勢にならなくて良かった」といったような感想なのですが、そこから約30年。どうも世界は「1984」的になっていってるように思えます。

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by patisserie-miya | 2017-10-29 13:53 |

世界の辺境とハードボイルド室町時代

村上春樹のパロディ本ではありません。
辺境ノンフィクション作家(って肩書きだったような…)の高野秀行氏と
日本中世史研究者の清水克行先生の対談本です。

「応仁の乱」(呉座勇一著)が大ヒットし、今中世史ブームだそうですが、
私は中世史(鎌倉〜戦国時代)は全然詳しくないので、
「え?そうだったの?」って知らない話盛り沢山でした。
この対談は現代の世界の辺境と日本の中世が似ていると指摘されたことから、実現したそうです。
私は特にアフリカで日本産の中古車が売れる理由に非常に感心しました。

ほぼ徹夜で読んでしまうほど面白かったです。
表紙はなんと山口晃さん。細部までじーっと見て笑えます。

高野氏も清水先生の本も一度も読んだことがなかったのですが、
これを機にお二人それぞれの著作にも手を出してみたいと思っています。



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by patisserie-miya | 2017-07-17 11:26 |

白夜を旅する人々

三浦哲郎の「白夜を旅する人々」を読んだ。

三浦氏は兄2人と姉3人がいる6人兄弟の末っ子。
その兄2人は失踪、長姉と次姉は自殺、三番目の姉はアルビノ(長姉もアルビノ)。

この「白夜を旅する人々」はご自身の家族をモチーフにした小説です。
よく世間で言われる「私小説」とは違い、「純文学」といった感じを受けました。

テーマだけ聞くと重苦しい話のように思われるかもしれませんが、
文章がとても美しく、東北地方の方言や風景描写が生き生きとして、
そして何よりも三浦氏の兄姉に対する愛情や敬慕がしみじみと伝わって来るのです。

三浦氏が物心ついた時にはすでに5人の兄姉のうち3人がいなくなっていたので、
より「文学」へと昇華させることができたのではないかなと思いました。

長編小説ですが、読み始めると止まりません。
ぜひ。




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by patisserie-miya | 2017-02-26 10:45 |

群像

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寝る前に少しずつ読んで、ようやく読み終わった「群像短編名作選」
54編の作品が掲載されています。
1964年の三島由紀夫から2014年の川上弘美まで年代順に並んでいます。

文芸誌というものを初めて買ってみた。
読んだことのある作家から、まったく知らなかった作家まで、
色んな文章に出会うことができて、こういう読書の仕方もいいなと感じました。

この中で初めて読んでみて、おもしろかったのは

安岡章太郎「悪い仲間」
三浦哲郎「拳銃」
吉村昭「メロンと鳩」
津島佑子「ジャッカ・ドフニー夏の家」
角田光代「ロック母」
川上未映子「お花畑自身」
筒井康隆「大盗庶幾」
藤野可織「アイデンティティ」

短編でスルスルと読めるので、ご興味があればぜひ。

読書も食わず嫌いはもったいないと思いました。
今年もたくさんの良き本に出会えますように。

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by patisserie-miya | 2017-01-08 16:21 |

ご本、出しときますね?

最近見ておもしろかったテレビ番組。

オードリーの若林さんが小説家のゲストとともにしゃべる番組。

今のところ、西加奈子さん、朝井リョウさん、長嶋有さんが出演しています。

毎回かなり笑えます。

上記3人の作品はどれも読んだことがなく、
この番組を見たからと言って、読みたくなるかと言われれば、
私はまったくそんな気は起きませんが、番組内容は非常に「へえええ」と思わせられます。

もちろん上記3人のことが嫌いとかそういうわけではなく、
なぜだか作品に興味を全然惹かれないというだけの理由です。
読んでみたら面白いかもしれないというのはわかってるんですけどねえ…。
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by patisserie-miya | 2016-07-22 15:06 |

「胡蝶の夢」

ようやく読み終えました。
司馬遼太郎著「胡蝶の夢」

この小説はまさに司馬さんの「寄り道」が絶賛発揮されており、
読むのに非常に時間がかかりました。

松本良順、島倉伊ノ助(司馬凌海)、関寛斎
この3人の蘭方医の話を中心に幕末の医学界が描かれています。

こんなことが本当にあったんだなあと驚きの連続でした。
3人ともかなり個性的な人ですが、
中でも伊ノ助は多分今だったらいわゆるアスペルガー症候群ではないかと思われる人で、
エピソードすべてがぶっ飛んでいて、かなり笑えました。
読んでいて司馬さんの伊ノ助への愛を感じました。

医学は日進月歩の世界ですが、結局は幕末の頃と変わらず、
大切なのは「衛生と養生」なのかなと思いました。

なんだかまとまりのない感想文になってしまいました…。
私の文章読むより、「胡蝶の夢」をご一読ください。
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by patisserie-miya | 2016-05-27 16:24 |

司馬遼太郎

昔「空海の風景」を数ページで断念してしまって以来、
司馬作品は避けていたのですが、
今年は司馬遼太郎の没後20年ということで
再チャレンジしてみました。

読んでみたのは「項羽と劉邦」と「梟の城」
以前読了できなかった理由は
史学の造詣が非常に深い司馬さんならではの脱線に頭が付いて行けなかったからです。
小説の途中に突如論文が出てくる感じで、自分の集中力が続かないのです。

「項羽と劉邦」は論文箇所はときたま出て来るのですが、
中国歴史のスケールの大きな話が非常に興味深く、最後までワクワクしながら
読む事ができました。

「梟の城」は忍者の話で、初期作品ということもあってか
論文箇所はほぼなかったのですが、
最後の最後に「石川五右衛門イコール忍者」説の記述があり、
「へー、面白いな」と思いました。

これを機に他の司馬作品にも手を出してみようかなと思ってます。
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by patisserie-miya | 2016-03-08 21:59 |

アパッチ族

またまた読書感想。
秋なので。

開高健「日本三文オペラ」
梁石日「夜を賭けて」

どちらもテーマは「アパッチ族」。

「アパッチ族」とは、
今の大阪城公園は戦前には東洋一の兵器工場があり、
終戦日の前日にアメリカ軍の爆撃で破壊されて廃墟になり、
そのまま終戦後10数年放置されており、
その廃墟から鉄などを掘り起こして、生活の糧にしていた
人々のことを指します。

放置されていたとはいえ、一応は日本国の国有財産なので、
アパッチ族は警察に追われる存在であり、
その攻防を両作品とも描いています。

アパッチ族は在日朝鮮人が多く、
梁石日はまさにアパッチ族の一人だったそうで、
鉄の重さが肩に食い込む場面や暗闇などの描写は実感をともなった真に迫るものでした。

そして「日本三文オペラ」はアパッチ族の解散という場面で
幕を閉じるのですが、「夜を賭けて」は解散後にも触れられています。
大村収容所の存在についてすら知らなかった私は、
「こんなこと本当に日本で、しかも昭和30年代にあったの??」
と驚きの連続でした。

どちらの本も非常に面白かったです。
ちなみに「日本三文オペラ」は20年ぶりの再読です。

文章は梁石日の方が会話文が多くてすらすらと読めます。
当事者にしか書けない怒りや憤りが感じられます。

「日本三文オペラ」は梁石日のアパッチ族の友人であり、
開高健の妻である牧羊子の詩人仲間でもあった金時鐘から開高が
アパッチ族のことを直接取材して書かれたので、
当事者目線ではない文章ですが、開高ならではの表現、語彙が豊饒で、
うっとりとさせられる一文に出会えます。
「ふとんからはみだした足のさきにひとかけらの秋がひっかかっていた」

まさに今はそんな季節ですね。
そんな気分で目覚めることが多い今日この頃です。
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by patisserie-miya | 2015-10-04 15:27 |

「誘拐」

本田靖春著「誘拐」ちくま文庫。

50年ほど前に起こった「吉展ちゃん誘拐事件」を題材にしたノンフィクション。

私が生まれる前の事件ですが、当時日本中が大騒ぎになり、
今でも記憶にある方もいらっしゃるようです。
この事件を機に電話の逆探知捜査ができるようになったそうです。

筆者は元新聞記者ということもあり、無駄のないわかりやすい文章で
非常に読みやすかったです。
「どうなるんだろう?」とページをめくる手がとめられなくなるほどの
緊迫感で、そのへんのミステリーや推理小説なんかよりよっぽどドキドキさせられました。

被害者家族にも死刑になった加害者にも公平に温かいまなざしが注がれており、
かつ日本人の性(サガ)や、日本社会にも非常に深い洞察でせまっており、
ただの事実を羅列しただけのノンフィクションとは一線を画す作品でした。

東京オリンピックを控え、高度経済成長に湧いているウラでは
社会の底辺の底辺でもがき苦しんでいる人がたくさんいるという
50年前の日本と現在の状況、状態ってほとんど変わっていないなと思わされました。

ぜひご一読ください。
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by patisserie-miya | 2015-09-09 15:58 |

「ビューティフル・マインド」

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「ビューティフル・マインド ー天才数学者の絶望と奇跡ー」
シルヴィア・ナサー著

お盆休みの間に読んだ一冊。
かなり分厚い本なので読み終えられるだろうかと思っていましたが、
とても面白くて、没頭してあっという間に読み終わりました。

早熟の天才と言われていたのに、30歳前後で統合失調症を発病。
以後30年ほどの闘病生活の後、奇跡的に回復して、ノーベル経済学賞を受賞した
数学者ジョン・ナッシュの人生を描いたノンフィクション。

私は観ていないのですが、2001年にはラッセル・クロウ主演で映画にもなったそうです。
ただこの原作とは少し違うようで、観ようか、原作イメージを保っておきたいからやめておくべきか現在思案中。

本を読むと統合失調症を発病する以前から、ナッシュはかなり「フツウの人」とは違っていて、
理解しがたい行動や考えがたくさんあり、まあ天才とはそういうものかもしれないと思いました。
本人も大変だろうけれど振り回されて、それでも支え続けた妻アリシアって
ものすごく忍耐力とエネルギーがある人。

ナッシュの人生とともに今まで全然知らなかったノーベル賞の選考の裏側も色々と描かれていて、
勉強になりました。
ただ「ナッシュ均衡」とか「リーマン多様体への埋め込み問題」などは
数学オンチな私にはさーーーーっぱりわからず。

本に描かれているのは1997年頃までですが、
今年2015年に自動車事故でナッシュとアリシアは亡くなってしまったそうです。
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by patisserie-miya | 2015-08-17 14:38 |